2016-12-20 静大衛星 宇宙に放出

静岡大工学部(浜松市中区)が開発した県内初の超小型衛星「STARS-C(スターズシー)」(愛称はごろも)が十九日、上空四百キロの国際宇宙ステーション(ISS)から軌道上に放出された。宇宙と地上をケーブルでつないで、人や物資を昇降機で運ぶ「宇宙エレベーター」の実現に向けた実証実験が本格的に始まる。

 STARS-Cは、九日に鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Bロケットで打ち上げられた無人補給機「こうのとり」6号機に搭載された。一辺十センチの立方体の衛星二基を合体させ、テザーと呼ばれる太さ〇・四ミリ、長さ百メートルのひもを収納する。宇宙で二基を分離し、地球に垂直にひもを伸ばしていく。

 宇宙エレベーターの終着点は、上空五万~十万キロと想定される。地上からケーブルを伸ばすのは難しく、宇宙から垂らす技術が必要になるという。

 静大浜松キャンパスには、責任者の山極(やまぎわ)芳樹教授(58)や学生ら約四十人が詰め掛けた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)による生中継がスクリーンに映し出され、午後五時五十分ごろ、カウントダウンに合わせてISSの放出装置から衛星が飛び出した。会場はどよめきとともに大きな拍手が響いた。

 こうのとりには東京大のEGGなど計七機の超小型衛星が搭載されており、放出はSTARS-Cが一番手となった。山極教授は「ほっとしたが、問題はこれから。宇宙エレベーターを実現するための基礎の基礎となる技術の実験を行う。小さな一歩だが、実現に向けた一歩になれば」と話した。

 放出を受けて、学生らが衛星からモールス信号で衛星利用測位システム(GPS)データなどを受信し、約一カ月後にひもを伸ばす実験にとりかかる。二十日午前に、衛星が浜松市上空の受信しやすい位置を通過し、報道陣に受信室の状況を公開する。(中日新聞 石川由佳理)