2004-06-02 NASA、ハッブル宇宙望遠鏡の修理をロボットで

NASAが遠隔操作ロボットによるハッブル宇宙望遠鏡の修理を目指し、ミッション案を募集。2007年にはこうした修理ミッションが実行に移される見込みだ。

 米航空宇宙局(NASA)は老朽化が進むハッブル宇宙望遠鏡の修理のために、宇宙空間で作業を行うロボットを模索している。同局の責任者が6月1日、天文学者に語った。

 今後ハッブル宇宙望遠鏡に宇宙飛行士を送らないとの決定を下してから約半年後、NASAのショーン・オキーフ局長はロボットによる修理ミッション案を要請した。

 「ロボットがこうした作業をこなせるという自信は高まっている」とオキーフ局長はデンバーで開催の米天文学会の会合で語った。

 「基本的にわれわれは、非常に器用なロボットが、地上にいる人間の助けを借りてこのミッションを行う可能性を追求している。われわれが求めているのは自律型のロボットではなく、遠隔操作ロボットだ。このミッションが前進すれば、ハッブルの維持を続けられるだろう」

 オキーフ局長は打ち上げから14年を迎えるハッブル宇宙望遠鏡の初期のトラブル――1次ミラーのゆがみによって、宇宙飛行士による修理が行われるまでぼやけた画像が送られることとなった――に触れつつ、ロボットによる修理ミッション案の正式な募集が1日に始まったことを明らかにした。

 こうした修理ミッションは、2007年には実行に移されるはずだと同局長は話している。その目的は、ハッブル宇宙望遠鏡が寿命を終えたときに安全に地上に降ろす方法を見つけること、バッテリーやジャイロスコープを追加することで有効寿命を延ばすこと、新しい設備を取り付けることにある。

 こうしたミッションがなければ、この望遠鏡は向こう2〜3年のうちに機能を失っていき、ジャイロスコープの停止とバッテリー切れにより、対象を絞った観測がほとんど不可能になるだろう。

 ロボットによるミッションは修理だけではなく、「ロボットを使って宇宙空間で巨大望遠鏡を組み立て、維持するというもっと野心的な活動の可能性を開くかもしれない」とオキーフ局長。

 NASAは過去4回にわたってハッブル宇宙望遠鏡の修理のために有人スペースシャトルを打ち上げたが、同局長は1月、あまりに危険なため今後そうしたミッションは行わないと発表した。この決定は、ブッシュ大統領が有人月面探査を再開し、火星への有人飛行を目指す計画を発表した数日後に明らかにされた。

 オキーフ局長は、ハッブル宇宙望遠鏡で人間によるミッションを行わないとの決定は、コロンビア号事故調査委員会による安全勧告を受けてのものだとしている。この委員会は、2003年2月1日にスペースシャトル「コロンビア号」が墜落し、搭乗していた7人の宇宙飛行士全員が命を落とした事故の調査を担当した。

Robonaut Ranger Dextre

 少なくとも3種のロボットが修理ミッションの候補に挙がっている。その1つがジョンソン宇宙センターの「Robonaut」。このロボットは白い宇宙服を着た飛行士に似ているが、人間の足にあたる部分がモノポッドになっている。あとの2つは棒線画のようなメリーランド大学の「Ranger」と、2本のアームに多数の関節を備えたカナダ宇宙局の「Dextre」だ。(ロイター)