2007-08-21 米軍機関、ロケット推進力利用のバイオニック義手実験に成功

米国バンダービルト大学の機械工学専門家チームによって、ロケット推進技術を使ったバイオニック義手が開発された。これは次世代スーパーソルジャの一部分として開発する30Mドルの軍事プログラムの一環として行われている。

この機械仕掛けの腕には超小型ロケットモーターが組み込まれており、9キロから11キロの重量を持ち上げることができる。これは現在の民生品義手の3倍から4倍の持ち上げ能力を実現している。また動きも3倍から4倍速く動かすことができる。

開発をリードしている機械工学教授マイケル・ゴールドファーブ博士によると、現在は力では最大には達していないが、他の民生品義手よりもおよそ10倍の能力をもっていることを意味すると述べている。

実験によると、この機械仕掛け腕は、これまでのものよりもより自然の動きに近い動作を達成している。従来の義手は2カ所のジョイントのみによって肘と爪の部分を動かすことができるが、今回のプロトタイプでは手首をねじ曲げたり曲げることも出来、指と親指を開いたり個々の指を閉じることもできる。

バンダービルド大学の義手開発は、国防総省高等研究計画局(DARPA)によって開発中の革新的人工腕のひとつである。

高等研究計画局ではユタ大学、カリフォルニア工科大学、そしてシカゴリハビリテーション研究所の神経科学者に資金を提供している。彼らは利用者の体や脳の神経に腕を接続することによって人工腕を制御する先端技術を開発している。

ゴールドファーブ博士によると、「現在の人工腕は機能が限られており利用頻度も低いため、バッテリー電力は十分である。より高機能な人工腕は、利用頻度も高くなるため消費エネルギーも増大するだろう。」、と述べている。

開発中の人工腕を理想的に利用するための電力を供給するバッテリーの重量が問題となり、電力重量比がより高いバッテリーを開発する高等研究計画局の別のプロジェクトにも参加している。

ゴールドファーブが期待するバッテリーの大きさは鉛筆サイズであり、特殊な触媒が組み込まれている。この触媒によって過酸化水素が燃焼し、純粋な蒸気を発生させ、一連のバルブを開閉させることに使われる。バルブはベルトを介してバネで引っ張られたジョイントにつながっている。

このベルトは航空機部品などで使われている特別なモノフィラメントでできている。過酸化水素が詰まる小型で密封された金属容器は、上腕に容易に組み込むことができ、通常の使用では18時間作動させるために十分な電力を供給することができる。

最も熱いバルブ部分を特殊なプラスチック製断熱材で覆うことで表面温度を下げ、さわっても安全である。また多孔性カバーから蒸気が排出されることで、蒸気は通常の汗と同じように蒸発する。蒸発する水分の量は暖かい日に腕から発散する通常の汗とほぼ同じ量である。

ゴールドファンド博士は「軍事目的のスーパーマンを作りあげているのではない。」と述べている。「われわれの設計では超人的な力や能力をもっているわけではなく、より人間の体の腕と同じような能力を達成する人工の腕を開発している。」と述べている。