2008-12-16 米国宇宙政策の新しい方向性示唆:宇宙開発諮問委員会報告書発表

2008年12月15日に、外部宇宙政策諮問委員会が、今後の米国宇宙開発の方向性を示す報告書を発表した。タイトルは、「The Future of Human Spaceflight White Paper」。この検討グループは、「Space, Policy and Society Research Group at MIT」となっていて、歴史家、技術者、政策アナリスト、元宇宙飛行士、オバマ政権遷移チーム、議会関係者等で構成されている。

http://web.mit.edu/mitsps/

結論として、現在の宇宙プログラムは予算が少ない中で、有人一辺倒から、有人とロボットのミックスしたプログラムに変更し、スペースステーションの利用をもっと積極的にし、研究目的に活用すべき、スペースシャトルを自動化すべき等としている。また、中国との協力関係強化を強調している。しかしながら、米国にとって宇宙開発は素晴らしいことであり、今後も積極的に進めるべきと、結論づけている。

要点は以下の通り、

・米国の宇宙開発は曲がり角に来ている
・ブッシュ政権が作成した宇宙開発プログラム、いわゆる「Vision for Space Exploration」を早急に見直すべき。「too much with too little」ということ。
・その理由として、少ない予算で多くのことを実行しようとして、安全面でも問題があり、実現そのものが困難
・有人プログラムの国際協力として、中国とインドとの関係強化。現在は米国独自で実行しようとし過ぎている。特に中国は重要で、かつて技術漏洩問題に端を発して関係が悪化していたが、その問題は解決可能
・宇宙ステーションをもっと積極的に活用すべき。米国の消極的な関わり姿勢は、他の参加国との国際協力姿勢にマイナス
・大衆の宇宙への興味は、アポロ時代の栄光以来、衰退しているように見えるが、航空宇宙分野への学生数も5年前に比べて増加しており、新しい宇宙時代が到来しようとしているし、宇宙開発は依然としてエキサイティングなプログラムである。

(編集者コメント:一方で、米惑星協会のグループが、「Beyond the Moon」と題する報告書を11月に発表している。このグループと今回の独立系検討委員会とはリンクしている。この報告書では、米国は月探査をそこそこに終わらしてもっと火星有人ミッションに積極的に予算を配分すべきだ、として月探査から火星探査にシフトすべき、としている。いずれにしても、宇宙開発の主目的である有人宇宙探査、しかも火星有人探査の話題が中国、欧州、ロシア、インド等から賑やかに発表される。)