2004-06-14 日本の宇宙産業グループ、新宇宙プログラムを政府に迫る

日本の航空宇宙企業の集まりである日本航空宇宙工業会(SJAC)は日本政府に対し、4件の新規宇宙プロジェクトに予算を割り当てるよう、政府に要求している。SJACはこのプロジェクト実施によって世界の商業宇宙市場におけるシェアを2020年までに20パーセントに増加できると考えている。

4件のプロジェクトは、太陽光発電、軌道上衛星サービス向け宇宙ロボット、Hope-Xのような2段式再使用型ロケット、成層圏小型飛行船(成層圏プラットフォーム)である。これらの提言は、4月26日から配布された「日本の次世代宇宙プロジェクト」に詳しく記載されている。

5月17日のSJAC坂本氏(宇宙技術部長)のインタビューで、2010年以降の日本の商業宇宙分野活性化のために実行可能な4つのプロジェクト実施が必要であるとして政府要人に予算配分を積極的に働きかけている。報告書には必要な予算や費用対効果分析は含まれていないが、坂本氏は今回の提案によって政府が議論の場に参加する姿勢を示してもらい、商業宇宙戦略計画が構築できることを期待していると述べている。特に現在官民共同の準天頂衛星とギャラクシーXロケットをさらに積極的に推進することを期待している。そして政府は開発予算の80パーセント以上を負担すべきと述べ、日本の宇宙産業界活性化及び繁栄がもたらされることが国にとっても利益になるとしている。

経団連の宇宙・エネルギ・技術部門担当部長の井上氏は、日経連としてはSJACの展望を支持しているが、現段階では準天頂衛星とギャラクシーXの実現に焦点を当てていると述べている。

文部科学省研究開発局宇宙開発利用課長の岩瀬氏は、この新商業宇宙開発戦略策定に向けて報告書の内容をレビューすると語っているが、現時点では提案の4プロジェクトに予算をつける予定は無いと語った。また岩瀬氏は、一般論として日本として宇宙開発は積極的に推進していくものの、産業界の要求を支援することはできないし、産業界は独自の商業宇宙活性化のためのリーダシップを取ってもらいたいとして、政府としては民間宇宙プロジェクトの支援に否定的姿勢を示した。

宇宙政策専門家の筑波大学鈴木講師は、SJAC提案の太陽光発電開発には12兆円程度の資金が必要であり、現在の経済環境では資金確保は不可能と見ている。そしてSJACの提案は希望的なものであって、政府の支援は得られていないものであると述べている。しかしながら、最近の宇宙プログラムに対する政府の対応は消極的で、このままだと、多くの宇宙関連企業は宇宙分野から撤退することも懸念され、世界の宇宙市場では日本のシェアも10パーセントに下落することも予想されると警鐘を鳴らしている。産業界が宇宙分野から撤退しても驚くことではないとして、現状の日本の宇宙開発の進め方に改善を求めている。(スペースニュース要約)