2003-02-25 北朝鮮地対艦ミサイルを発射実験 日本海の公海上に着弾

対艦ミサイル:NATO呼称「Silkwarm」
Haiying-1 (HY-1):NATOコード名「CSS-C-2」
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 韓国国防省は25日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が24日午後、日本海に向け地対艦ミサイルの発射実験を行ったと明らかにした。同省によると、ミサイルは、朝鮮半島北東部の北朝鮮・咸鏡南道(ハムギョンナムド)の海岸沿いから発射された。25日付の韓国紙・中央日報によるとミサイルは約60キロ飛んで公海上に着弾したという。別の消息筋によると、ミサイルは2回発射されたという。韓国の盧武鉉(ノムヒョン)新大統領就任式直前のミサイル発射実験は、核問題で圧迫を強める米国をけん制すると同時に、韓国新政権を揺さぶる狙いがあると見られる。 

 現地外交筋などによると発射されたのは、北朝鮮が保有する対艦ミサイル「シルクワーム」改良型で、24日午後1時と午後3時の2回、発射された。シルクワームは中国で開発された射程100キロ前後のミサイルで、日本への直接的な脅威とはならないという。

 国防省当局者は「北朝鮮軍が実施中の冬季訓練の一環か、保有するミサイルの性能試験をした可能性もあり、米国と協力して分析を進めている」と語った。北朝鮮は93年の前回の核危機で朝鮮半島情勢が緊張した94年5月31日にも、日本海でシルクワームの発射実験を行っている。

 昨年9月の日朝首脳会談で署名された平壌宣言には、北朝鮮が「ミサイル発射のモラトリアム(凍結)」を03年以降も続けることが明記されているが、日本の外務省当局者は「平壌宣言の対象は弾道ミサイルであり、シルクワームは対象とならない」と述べた。

シルクワーム
 英語で「蚕(かいこ)の意味。中国が旧ソ連から提供を受けた技術を元に1960年代に開発した地対艦ミサイル。全長約7メートル、直径約80センチ。発射重量は約3トン。マッハ0.9前後で高度25メートル付近を飛行する。

 本来の目的は沿岸警備用だが、中国は北朝鮮のほかエジプト、パキスタン、イラン、イラクなどに輸出。80年代のイラン・イラク戦争では、ペルシャ湾のタンカー攻撃にしばしば使用された。

 北朝鮮では2連隊に配備され、発射施設は6カ所ある。94年5月31日、約160キロ離れた日本海の標的に向け同型ミサイルの発射実験を実施。この時のミサイルは射程を約200キロに延長した改良型だったとされる。 (毎日新聞)