2006-04-17 戦略的最優位を確保しようともくろむペンタゴン

ラムズフェルド国防長官を筆頭にブッシュ政権と米空軍の中の「宇宙タカ派」の存在を指摘するのは、「憂慮する科学者同盟」のミサイル防衛の専門家ローラ・グレゴ氏とシンクタンク「防衛情報センター」のテレサ・ヒッチェンズ所長である。宇宙タカ派は、数多くの計画立案文書で、米国は「宇宙空間に存在する財産を守り」、あるいは「全面支配」を確立する必要があることを明言している。

 2007年の国防総省のミサイル防衛支出は、1999年から70億ドル近く増大され111億ドルに達している。宇宙兵器がもはやSFの世界のものではないことを示すなによりの証拠は、数年前に比べ、衛星攻撃兵器の可能性を含め、実験が頻繁に行なわれていることだ。グレゴ氏は「米国がこの道を進めば、諸外国も米国に対抗するため宇宙兵器の開発に乗り出すだろう」と訴える。

 「宇宙の兵器と原子力に反対するグローバル・ネットワーク」をはじめとする宇宙の平和利用を主張する活動家は、米国は冷戦時代からすでにこの道を歩み始めていると訴える。グローバル・ネットワークがNASAと米空軍の監視下にあることが、「市民的自由連盟(American Civil Liberties Union)」の調査で明らかになっている。なぜNASAと空軍は秘密情報源を使ってまでグローバル・ネットワークに神経を尖らせているのか。グローバル・ネットワークのブルース・ギャグノン氏は次のように憶測する。

 有人火星探査計画の一環として2020年までに恒久的な月面基地建設を計画しているブッシュ政権は、ヘリウム3をはじめとする月の資源を独占しようともくろんでいる。ヘリウム3は核融合に利用でき、地球にはほとんどないが、数百年分の動力を地球に供給するに十分な量が月には存在するという。ロシアも2020年までに月面基地を建設する計画で、理由のひとつはヘリウム3である。中国も今後10年で有人の月探査を計画している。米国は、月の経済的利害を守り、あるいは米国以外は月から締め出そうと、ミサイル防衛を装って、兵器を装備した衛星を配備しようとしているのではないか。中露米の間で月の争奪戦が起きるだろう。