2004-06-12 米衛星の計画変更→データ収集途切れ日本「困った」

 火星や月への有人探査を打ち出した米国の宇宙政策が、日本の環境観測衛星計画に打撃を与えている。

 米航空宇宙局(NASA)は有人探査の重点化と引き換えに、環境観測部門の予算を圧縮した。そのあおりで、合計3基の衛星が運用停止や打ち上げの延期など計画変更を余儀なくされる。

 日本は今年4月、東京で開催した地球観測サミットで、衛星を活用した地球温暖化への対応を国際貢献の柱として打ち出したばかり。だが、実際には日本独自の環境観測衛星は稼働しておらず、現在の計画は他国の協力が不可欠だ。

 こうしたなか、NASAは向こう5年間だけでも1兆3000億円以上必要とされる有人探査計画に予算を振り向けるため、気象観測など地球科学部門の来年度予算を前年度比7・9%減の約1630億円に削減。日本と共同開発した熱帯降雨観測衛星(TRMM=トリム)の運用を7月中旬に停止、同じく共同開発の後継機の打ち上げを2008年2月から2年程度延期させる検討をしている。

 トリムはレーダーで降雨をとらえる世界初の衛星だ。1997年に打ち上げられ、異常気象の研究データを収集している。設計寿命の3年を超えても機器は良好で、2007年ごろまで運用される予定だった。

 ところが、米国は日本側に運用終了を打診した。宇宙航空研究開発機構も「合理的な理由があれば反対する権利はない」として、近日中の停止を受け入れる方向だ。これに対し、日本の研究者らは「貴重なデータが途切れてしまう」と反発し、日本気象学会などでは衛星の運用継続を求める署名活動を行っている。

 一方、NASAが打ち上げ延期を検討中の後継衛星は、気象予報精度の向上が目的。この衛星は日本が独自開発する温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)とともに、H2Aロケットで打ち上げるはずだった。GOSATは二酸化炭素などの温室効果ガスを全地球規模で観測する。京都議定書で温室効果ガスの削減目標が課せられる2008年に打ち上げ、観測技術を確立するのが日本の狙いだ。

 費用が高くなるH2Aでの単独打ち上げを避けるためには、GOSATと相乗りする衛星を探すか、開発中の中型ロケット「GX」を使うしかない。ロケットによって衛星の仕様も変わるため、研究者からは「いまだに計画が確定しないなんて」と不安の声も出ている。(読売新聞)